
滑って、浸かって、歩いて夕食へ
赤倉温泉の裏には、なかなか粋な配管があります。妙高山の高いところにある湯けむりの谷から温泉が引かれていて、スキーヤーもほぼ同じルートを雪の上で下ってくる。どちらも最後は、旅館とラーメン店とバーが並ぶ麓の小さな温泉街にたどり着きます。魅力はこの一枚の絵にすべて詰まっています。本格的なゲレンデの真下に本物の温泉街があり、ラスト一本を滑り終えたら、車のエンジンをかけることなく、温泉に浸かって夕食を注文できるのです。
ここは妙高高原の中心拠点で、本州でも指折りのインターナショナルな一角です。レンタルショップもレッスンも英語対応が当たり前で、リフト待ちではオーストラリア訛りの英語があちこちから聞こえてきます。それでいて、細い路地、昔ながらの温泉旅館、大きなパーティータウンよりゆったりした夜の流れと、ちゃんと日本の温泉街らしさが残っています。
山そのものも、思っている以上にいいんです。三つのエリアにまたがってリフト14基、コース17本。脚に自信のある中級者が飛ばせるクルージングコースがたっぷりあり、急斜面もいくつか、寒波の後に息を吹き返す林のポケットも。隣の赤倉観光リゾートとも直結していて、エリアでは数少ないナイター営業のゲレンデでもあります。
弱点は混雑です。平日はのんびりですが、週末や祝日は日帰り客、家族連れ、スクールでにぎわい、目立つパウダーはすぐに荒らされます。ここからは狙う時間帯、泊まる場所、そして妙高高原の別のスキー場に移るべきタイミングを紹介します。
スキー場データ
主要スキー場の推定累計降雪量です。実際の数値はスキー場、標高、観測地点、シーズンによって大きく異なります。
- 標高差550m(1200m → 650m)
- 降雪量約13m
- コース比率 35% 40% 25%
- ツリーラン
- リフト券¥7,000
- リフトクワッド2基、トリプル4基、ペア8基
- 混雑度
- コース外滑走パトロールにリフト券を没収されることあり
- ナイター
- 家族向け
- コース数17
- 滑走エリア約80ha
- 雰囲気温泉街の活気、王道の妙高
コースマップ
宿泊施設
地図で見る赤倉温泉の王道ステイは温泉街の中。一日のリズムは温泉が決めてくれます。赤倉ホテルのような老舗ホテルなら、朝食、スキー、ゆっくり温泉、館内で夕食とすべてがシンプル。スキーを玄関に立てかけたまま旅館泊を楽しめる、全国でも指折りの場所です。
ホテル太閤は海外スキーヤーにも人気の中間的な選択肢で、大きな温泉と、階下には自前のバーGrape and Grainも。エリアの最上級クラスなら、山の観光側の高いところに建つ赤倉観光ホテル。由緒あるリゾートホテルで、温泉も食事もワンランク上です。景色を眺めながら一杯やりに立ち寄るだけでも価値があります。
ほかにも温泉街には小さなロッジやペンションが多く、海外からのゲストへの対応も手慣れたもの。1月と2月は早めの予約を。小さな宿ほど早く埋まります。夜遊びは控えめなので、朝イチ勢にはむしろ好都合です。
各拠点エリアの詳しい比較は妙高の宿選びガイドで。
パウダーとコース
赤倉温泉は、日本海からの寒気が山にぶつかって雪をどっさり落としていく、妙高高原の寒波の通り道にあります。雪の量は豊富で、北海道よりはやや重めのことが多いものの、タイミングさえ合えば十分に滑りやすい雪です。ベストは厳冬期。暖かい周期には午後になると下部のコースが重くなりますが、上部は長持ちするので、上から滑り始めて徐々に下りていきましょう。
ゲレンデはヨーデル、熊堂、銀嶺の三つのゾーンに分かれています。メインの拠点は熊堂で、第1クワッド、インフォメーションセンター、無料シャトルの停留所がそろい、ほとんどの人はここからスタート。ヨーデルと銀嶺は緩斜面とキッズエリアが中心なので、初心者やスクールが高速で滑る人たちと交わらずに済みます。全体としては斜度より幅と流れを重視したつくりで、自信のある中級者向けの長く速い圧雪バーンと、上級者の脚にも喝を入れる短い急斜面がいくつか。コースのおよそ5分の1は非圧雪で、パウダーの朝に効いてきます。
寒波の後にここへ戻ってくる理由は林です。整ったゲートシステムで用意されているわけではなく、コースとコースの間やコース脇のポケットを自分で見つけるスタイル。ドカ雪の後なら数本は最高の滑りができます。ロープ規制は厳格で、エリア外に出るとリフト券没収もありえるので、ガイドと一緒でない限りは指定エリア内で滑りましょう。
パウダーの朝は早起き必須。人の多い拠点なので、わかりやすいラインから先に食われていきます。まだ柔らかいうちにきれいなフォールラインの圧雪バーンを滑り、メインコースが荒れてきたら林や風の当たらないエッジへ。寒波明けの快晴の日は、目立つ斜面はすぐにリセットされ、風裏の斜面がいちばん長くいい雪を残してくれます。
寒波の日の作戦を立てやすくするポイントが二つ。ひとつは、赤倉温泉は赤倉観光リゾートと直結していて、共通券ならより高いリフト、より長いコース、違う向きの斜面が加わること。もうひとつは、妙高高原では珍しく、ほぼ毎晩ナイターがあること。朝が混んでいたら午後は温泉に浸かり、空いたころにナイターで戻ってくればいいのです。
アクセス
ほとんどの人は電車で来ます。東京からは北陸新幹線で長野へ(約1時間20分)、そこからしなの鉄道北しなの線で妙高高原駅へ(約45分)。駅からは熊堂のインフォメーションセンター行きの無料シャトルが出ていて、路線バスなら温泉街まで約10分です。新潟側の上越妙高駅からのアクセスもあり、西方面から来る人に便利。乗り継ぎがよければ東京からドア・ツー・ドアで約3時間半です。
飛行機なら、羽田・成田どちらからでも東京駅経由でOK。電車を二本乗り継いでスキーバッグを運ぶなら、宅配便で先に送ってしまうのも手です。移動手段のあれこれはスキー旅行の交通ガイドにまとめています。
車でのアクセスも楽な部類です。上信越道の妙高高原ICからゲレンデまで約10分、駐車場は約1,300台分。問題は寒波です。大雪だと温泉街への最後の区間で時間がかかり、週末は駐車場がすぐに埋まります。スタッドレスタイヤは必須、チェーンも携行しましょう。
着いてしまえば、赤倉温泉はエリアの真ん中という好立地。一週間同じ宿に泊まったまま、バスや車でほかのスキー場にも気軽に足を延ばせます。
どんな人に向いている?
- 初めての人良い
- パウダー狙い良い
- 滑らない人最高
- 予算重視まずまず
- アフター・夜遊び良い
- アクセスのしやすさ最高
赤倉温泉は、本格的なスキータウンで、安定した雪と一週間飽きない変化を求め、しかも車ありきの計画はしたくない中級者に最適です。ワイドな圧雪バーンで思い切り飛ばし、条件がそろえば林に飛び込む。そんな滑りが好きなら、きっと大満足です。
上級者は、ひとつの山としてより拠点として使うと最大限に楽しめます。急斜面は本物ですが量は限られ、いちばんいいツリーランはスピードより地元の知識がものを言います。赤倉観光リゾートとの共通券を足し、妙高高原周辺への日帰りを何度か組み込めば、エキスパートにとってもずっと充実した一週間になります。
初心者や家族連れへの配慮もばっちり。緩やかなヨーデルと銀嶺のゲレンデなら、練習中の人も高速で滑る人たちと交わらずに済み、無料のキッズスノーパークもあり、温泉街は歩いて回れるので夕食に車を出す必要もありません。小さな子ども連れにおすすめの日本のスキー場にも堂々ランクイン。ド派手な夜遊びや長いバックカントリーツアーを求めるなら、ほかを当たりましょう。
グルメとアフタースキー
ゲレンデの食事は、カレーライス、ラーメン、カツ、手早く食べられる丼ものと、おなじみのゲレンデ食堂ラインナップ。吹雪の日にはこれで十分です。それより大きいのは、温泉街がすぐそこにあること。滑る本数を計算しておけば、ランチをゲレンデ飯で済ませる必要はありません。
温泉街の飲食店は、小さな温泉地としてはかなり充実。メインストリートには焼き鳥屋、ラーメン店、家族経営の居酒屋が並び、シンプルで満足度の高い夕食にありつけます。メインストリートの中ほど、Hotel Senkeの前にあるMr. Burgerは、また麺類か…という気分のときにハンバーガーやクレープでリセットできる一軒。はしご酒の作戦は居酒屋ガイドもどうぞ。
アフタースキーなら、赤倉温泉は妙高高原の社交の中心。Jack's Barは一杯ひっかけてにぎやかな雰囲気を楽しめる古株の人気店、ホテル太閤のGrape and Grainはもう少し洗練された選択肢で、ライブ演奏があることも。とはいえ最高のアフタースキーはいちばんシンプルな流れ。まず温泉、次に夕食、まだ元気があれば一杯です。
Japow Travelのアドバイス
- 営業時間:日中のリフトは通常8:30〜16:00。ナイターは12月下旬から3月中旬まで17:00〜21:00で、金曜と土曜の夜は延長営業があります。
- 雪崩とバックカントリー:ロープの外は本格的な山岳地形です。妙高高原の雪はあっという間に積もり、視界は数分で消え、パトロールの取り締まりも厳しめ。ツアーに出たいならガイドを雇いましょう。
- 天気と雪:頻繁な寒波とすぐのリセットが日常です。雪は北海道より重めのことが多いですが、大事なのは安定感。暖かい時期は午前中に上部を滑りましょう。
- チケット:赤倉温泉の早割券は赤倉観光リゾートでは使えず、共通券へのアップグレードもできないので、どちらにするか決めてから買いましょう。ナイターも滑るなら、日中+ナイター券がお得です。
- ルール:エリアでも特に海外勢の多い拠点ですが、ルールはきっちり日本流で運用されています。標識に従い、ロープを尊重しましょう。
- 組み合わせたい近隣スキー場:赤倉温泉をハブにして、日替わりでほかへ。隣の赤倉観光リゾートはより高いリフトと長いコース。池の平温泉はフラットライトの日に頼れるワイドバーン。杉ノ原はロングクルージングとエリア最大の標高差。関温泉スキー場は深雪と昔ながらの雰囲気で、寒波の日の切り札。ロッテアライは大きくモダンなリゾートの一日、ツリーランなら斑尾高原です。
結論:妙高高原の一週間を楽にしてくれる拠点
赤倉温泉が際立つのは、単なるスキー場ではないから。一日が勝手に回っていく、完成された冬の拠点です。朝は寒波の雪を滑り倒し、午後は温泉、物足りなければナイター、夕食へはちょっと歩くだけ。雪は安定、地形は一週間飽きない程度に変化があり、妙高高原のほかのスキー場もすぐそこ。しっかり滑りたい、でも本物の温泉街も味わいたい、計画で頭を悩ませたくない。そんな人にとって、本州屈指のオールラウンドな拠点です。
