
道の終わり、楽しさの始まり
宝台樹への道は、ダムの壁、雪に埋もれた温泉の集落、宝川の看板を過ぎながら利根川をさかのぼり、道路がもうネタ切れになったあたりでリフトの下に車を停めさせます。その奥まった立地こそがポイント。みなかみの町のずっと先の脇谷に隠れていて、日本海からの北西の風をつかまえ、東京にこれだけ近いゲレンデとしてはしっかり雪を保ちます。リフト7基で16コース、みなかみエリア最大のネットワークで、最長滑走距離は2,600m、40度を超える黒コースもあります。
難点は、東京もそれを知っていること。土曜は学校団体、家族連れ、関東の週末組がひっきりなしにやってきて、下部のペアリフトにしわ寄せがきます。平日に来れば全体がほっと息をつきます。地元の人は仕事中、クワッドは半分空で回り、上部の黒コースは午前中ずっとやわらかいまま。レッスンも予約しやすいです。
宝台樹を大きな圧雪工場以上の存在にしているのは、公認のツリーランゾーンと、第7リフトから行ける非圧雪の黒コース3本。群馬のほとんどのゲレンデよりフリーライドの自由度は高めです。大雪のシーズンは累積降雪量が10mを超えます。深さでは谷川岳にかないませんが、本州としては当たりの確率が高く、リフト網が人を一点に集めず分散させてくれます。
そして食事。群馬でいちばん迷子なレストランもあります。標高1,400mの沖縄そばスタンドが、ゴーグル姿の人たちに南国の麺を出しているのです。ここからは、降雪日にどこを滑るか、いつ避けるべきか、車なしでの行き方を紹介します。
スキー場データ
主要スキー場の推定累計降雪量です。実際の数値はスキー場、標高、観測地点、シーズンによって大きく異なります。
- 標高差570m(1400m → 830m)
- 降雪量約9m
- コース比率 30% 40% 30%
- ツリーラン
- リフト券¥7,400
- リフトクワッド2基、ペア5基
- 混雑度
- コース外滑走ツリーランエリアのみ
- ナイター
- 家族向け
- コース数16
- 滑走エリア約193ha
- 雰囲気東京の週末組の熱気、子ども向けのベース
コースマップ
宿泊施設
地図で見るベースに町と呼べるものはないので、ほぼ全員が谷を下って泊まり、車かシャトルで上ってきます。ぜいたくするなら、道を約20分戻った宝川温泉 汪泉閣。川沿いの巨大な露天風呂と伝統的な会席料理が待っています。宿選びの参考に旅館ガイドもどうぞ。
静かな谷川の谷にある旅館たにがわと別邸 仙寿庵は、料理ともてなしで選ぶ特別な日の宿。家族連れや節約派は水上駅近くの中価格帯の宿のほうが便利で、週末シャトルの乗り場、コンビニ、手軽な夕食がそろっています。町とゲレンデの間の谷沿いの道にはペンションや民宿が点在し、車ならいちばん実用的な拠点です。通勤が短く、始発リフトに早く乗れて、たいていボリュームのある朝食つき。
ナイトライフは控えめ。駅や諏訪峡周辺に居酒屋が数軒あるだけで、スキー場はリフトとともに閉まります。
パウダーとコース
宝台樹はきれいに3つのゾーンに分かれます。第9クワッドの高い尾根、第7ペアの急斜面、そして第6・第8リフトがカバーする真ん中の初級〜中級の大きなボウル。まずはトップへ。晴れた日は谷川岳と利根川源流を一望できます。ナリノダイラコースは尾根に沿って1,400m、最大25度の本格的な上級クルージングコースで、長く思い切ったターンが報われます。そこから分かれる第9コースは26度で降雪後はパウダーが残りやすく、第10コースは左へ谷を下り、途中に天然のクォーターパイプがあり、ファミリーゲレンデへつながって2km近く途切れずに滑れます。
宝台樹の急斜面の評判を支えるのは第7ペア。頂上から左のイーグルは最大40度で、ところどころ急すぎて圧雪できないため、降雪の合間に雪がたまってコブになります。右へまっすぐ下るダウンヒルは32度で一切圧雪されず、リセットの朝にまず行くべき場所。パラダイスはパノラマの尾根から最大35度で落ち込み、こちらも非圧雪です。膝が嫌がるなら、第5ウエストコースでイーグルのコブ斜面を迂回できます。
パウダーハンターにとって大きいのがツリーランエリアの新設。ゲートのネットワークではなく管理されたゾーンで、ルールは厳格です。ヘルメット着用必須、充電した携帯電話を持ち緊急連絡先を登録すること、そして深雪の日は埋まりやすいので、スノーボーダーは単独で入らないよう求められています。ゾーン内での救助は実費請求です。
入口近くの第1ペアから行ける白樺ゲレンデもお見逃しなく。別の小さなゲレンデのようで、脇には非圧雪の雪があり、混む日の地元の穴場です。パークライダーには積雪次第で最大3つのエリアがあり、メインはポラリスコース下のパークです。
週末は下部のペアリフトから列ができ、クワッドは人をよくさばくので、午前中は第9と第7を回し、昼過ぎに真ん中の圧雪へ流れていきましょう。尾根に風が吹く荒れた日は第8クワッドが風を避けられる選択肢で、吹きさらしの山頂に行かなくても山の大半をつなげます。
アクセス
車なら関越道の水上ICで降り、宝川温泉・湯の小屋方面の案内に従って19km、条件がよければ約30分。4輪すべてスタッドレスタイヤが前提で、チェーンも推奨されています。最後の上りで立ち往生する車がたびたび渋滞を起こすからです。粟沢の信号で西側の道を選ぶと6km短いものの急なので、大雪の日は遠回りのダム経由で。レンタカー、タイヤ、チェーンについては冬の運転ガイドで詳しく。
車がなければ、上越新幹線で東京から約70〜80分の上毛高原へ。土日祝と年末年始は上毛高原から水上駅経由の無料シャトルが1日2便あり、ゲレンデ着は9:40ごろと12:20ごろ、帰りは13:35と16:40。それ以外の日は路線バスで「宝川入口」まで行き、スキー場の連絡シャトルに乗り継ぐか、水上駅からタクシーで30分。新幹線、バス、乗り継ぎの組み合わせ方はスキー旅行の交通ガイドで解説しています。
どんな人に向いている?
- 初めての人良い
- パウダー狙い良い
- 滑らない人いまひとつ
- 予算重視まずまず
- アクセスのしやすさまずまず
宝台樹は、長い圧雪コースから本物の急斜面へステップアップしたい自信のある中級者と、北海道まで飛ばずに合法のツリーゾーンと非圧雪の黒コースが欲しい上級者にぴったり。早めに着けば、東京近郊のスキー場の中でも週末の有力候補です。家族連れには柵で囲まれたキッズランド、託児所、1kmのやさしい初級コース。ほかを探すべき人は?アルパインのボウルや開けたバックカントリーが欲しい人(それは谷川岳の領分)、そして歩いて夕食に行きたい人。ベースに町はありません。
グルメとアフタースキー
山の上の食事は必要以上にいい。メインのフードホール「宝台樹食堂」はラーメン、丼もの、定食をカバーし、週末は「カレーハウスほたか」の厚切りポークカツカレーが小隊ひとつ分を満たせそうな迫力。「Fire Cracker」はビールバーで、自家製ケバブと自分で組み立てるホットドッグ。「DDC」は自家焙煎コーヒーとピザ、「カフェレストラン谷川」はオムライスを落ち着いて食べたいときに。そして山頂には沖縄そばのスタンドがあり、珍しさと眺めのためだけに1本上る価値があります。町に戻ったら、まず温泉、それから駅周辺の居酒屋か、地ビールならOctone Brewingへ。
Japow Travelのアドバイス
- 営業時間:08:30〜16:30、ナイターはありません。チケット窓口は08:15から。
- ツリーラン:ヘルメットと充電した携帯電話は必須、仲間と一緒に滑ることを強く推奨。管理ゾーンの外は閉鎖されていて、パトロールがリフト券を没収します。
- 天候:北西の雪雲が上部の尾根に雪を積もらせます。風の強い日は吹きさらしの山頂の尾根が真っ先にやられるので、第8プランを用意しておきましょう。
- 駐車場:平日は無料、土日祝と年末年始は有料です。
- 家族連れ:キッズランドの入場はリフト券と別、未就学児はリフト無料、託児所「Snow Fairy」は事前予約が必要です。
組み合わせたい近隣スキー場
同じ道を少し下った藤原スキー場は、半日の追加に手軽。谷川岳は深い雪と急な地形を求める降雪日のアップグレード先で、ノルン水上、水上高原、川場スキー場はどれも1時間以内。変化をつけたいときや、ノルン水上ならナイターにも。
総評:みなかみ最高のオールラウンダー
宝台樹は群馬でいちばん深くも有名でもありませんが、いちばんやることが多いゲレンデです。長い尾根のクルージング、非圧雪の黒コース3本、合法のツリーゾーン、本格的なファミリー設備、週末の無料シャトルで、みなかみ旅の軸に当然選ばれます。降雪後の平日に行って第7リフトへ直行し、沖縄そばは脚が尽きたときのために取っておきましょう。
