
硫黄の湯けむりと岩手最高所のリフト
網張温泉は、スキー場を風呂で評価する人のためのゲレンデです。リフトは岩手のどこよりも高く上がり、麓のホテルには火山から直接引いた温泉の浴場が5つ。運営全体のペースは定年退職した先生くらいのんびりです。脚が限界になるまで滑ったら、スリッパでぺたぺた移動して、眉毛の雪が溶けていくのを感じながら白濁の露天風呂に沈みましょう。
岩手山の南西斜面の高い場所にあり、盛岡から約50分。ホテルと同じ休暇村グループが運営しています。古い固定式リフト4基、コース7本、最長滑走距離は約3km。小さいけれど意外と背の高い山です。客層は圧倒的に地元の人で、リフト券は安く、小学生以下は無料です。
難点は、何ひとつ速くも洗練されてもいないこと。リフトは遅く、ナイターもなく、ホテル以外にベースの町もありません。でもだからこそ、降雪後何日もやわらかい雪が残るのです。滑って荒らす人がほとんどいないので。
このレビューは、のんびり静かで温泉第一の山を岩手の旅に入れるかどうか、入れるならどう使いこなすかを迷っている人向けです。
スキー場データ
- 標高差710m(1350m → 640m)
- 降雪量約9m
- コース比率 35% 50% 15%
- ツリーラン
- リフト券¥5,500
- リフトリフト4基(固定式)
- 混雑度
- コース外滑走パトロールにリフト券を没収されることあり
- ナイター
- 家族向け
- コース数7
- 滑走エリア約80ha
- 雰囲気静か、温泉推し、昔ながら
コースマップ
宿泊施設
地図で見る山の上で泊まれるのは休暇村岩手網張温泉だけで、ここに来る一番の理由でもあります。部屋はシンプルで少し古め、夕朝食はビュッフェ。本当の目玉は火山から直接引いた5つの天然温泉で、山を望む硫黄の露天風呂もあります。部屋からリフトまで歩いて数分、午後の半ばにはもう湯の中です。こうした宿についてもっと知りたいなら、スキーホテルガイドから読んでみてください。
雫石プリンスホテルは車で約25分。エリアの複数のスキー場を回りたいグループ向きです。規模が大きく洗練されていて、玄関前がゲレンデですが、網張の静かな魅力はありません。
夜遊びや飲食店の多さを求めるなら盛岡を拠点に。駅周辺にはビジネスホテルがたくさんあり、網張までは車で約50分。早朝出発も楽で、町を出るときにコンビニで朝ごはんを調達できます。
パウダーとコース
網張の最大の武器は標高です。最上部のリフトは約1,350mに達し、上部は盛岡周辺の低いスキー場より冷たく乾いた雪をつかまえ、春まで長く保ちます。日本海からの雪雲は岩手山に届くころには水分をほとんど絞り出されているので、新雪は重くならず、軽くなめらかになりがちです。
4本のリフトは段階的に上っていくので頂上まではそれなりに時間がかかりますが、いい滑りの大半は上半分にあります。ツインフォレストコースは樹氷の林の間を縫うように下り、滑れる初心者でも大丈夫なやさしさ。白樺ゲレンデとその上の急なコースが、中級者の頑張りどころです。最大斜度は30度台後半に達し、しばらく雪が降っていないとかなりアイスバーンになります。
ここではパウダーが長持ちします。ほとんどの人は圧雪コースから出ないので、降雪後1〜2日はコースの端やコース間にやわらかい雪が残ります。指定の非圧雪ゾーンでは、深い雪を正々堂々と滑れます。針葉樹の林は木の間隔が広く、広葉樹ではやや狭め。斜度がゆるいので、上級者向けの試験というより、ツリーランへのやさしい入門編です。
境界の外では、岩手山の斜面が本州北部でも指折りのツアーフィールドになります。ただしここはサイドカントリーではなく管理外のバックカントリーで、ウインドスラブ、雪庇、ツリーホールと向き合うことになります。地元ガイドと行き、雪崩装備一式を持ち、検討する前に日本で安全にバックカントリーを滑るためのガイドを読んでください。パトロールはコース内のルールを厳しく運用しているので、リフトから単独で出て行くのはやめましょう。
アクセス
東北新幹線なら東京から盛岡まで2時間ちょっと、最寄り空港はいわて花巻空港です。盛岡駅西口の27番乗り場からホテルの無料送迎バスが網張まで1日数便出ています。前日までの予約制で、所要約1時間です。
盛岡から車で約50分。12月から3月はスタッドレスタイヤが必須で、最後の上りは急で風をまともに受け、強風時は吹きだまりができやすいので、スコップを積み、大雪のあとは道路状況を確認しましょう。レンタカーなら近くのスキー場との組み合わせもぐっと楽になります。
どんな人に向いている?
- 初めての人良い
- パウダー狙い良い
- 滑らない人まずまず
- 予算重視まずまず
- アクセスのしやすさいまひとつ
網張は、スピードやバリエーションより、新雪、短い列、いい風呂を大事にするのんびり派のスキーヤーやスノーボーダーにぴったりです。滑れる中級者は頂上からのロングランを楽しめ、遅いリフトに我慢できる上級者なら、降雪後は林の中で何日もやわらかい雪を見つけられます。子どもは無料でホテルもゲレンデの目の前なので、家族連れにもおすすめです。
速いリフト、テレインパーク、ナイター、にぎやかなベースの町が欲しいならパス。そういう人は安比高原のほうが満足できるので、網張はたまの日帰りにしましょう。
グルメとアフタースキー
ランチはスキーセンターのカフェテリアで。ラーメン、カツカレー、唐揚げ、麺類がそろい、地元の一番人気はラーメン。値段も手頃です。コーヒーと軽食の小さなカフェもあります。おしゃれさは期待できませんが、温かくて早くて、リフトからも近いです。
アフタースキーはほぼ風呂。ほとんどの人は最後の1本のあとそのままホテルの温泉へ直行し、夕食前に一杯。ほかに泊まっているなら、数分の場所にある日帰り温泉「薬師の湯」もあります。盛岡ならわんこそば、盛岡冷麺、じゃじゃ麺、そして駅周辺にはたくさんの居酒屋が。
Japow Travelのアドバイス
- シーズンと営業時間:シーズンは12月下旬から3月下旬まで、リフトは8:30〜16:00。ナイターはありません。
- リフト券:大人1日券は¥5,500、小学生以下は無料です。
- 雪と天候:上部は冷たく乾いた雪。強風で上部のリフトが減速・運休することがあるので、大荒れの日は下部を回るつもりでいましょう。
- 境界:非圧雪ゾーンやコース間は滑ってOKですが、ガイドなしでスキー場の外には出ないこと。パトロールはリフト券を没収できますし、実際にします。
- 支払い:食事やレンタル用に現金を持っていきましょう。
- 近くのスキー場:岩手高原と雫石スキー場がすぐ近くで、どちらも日帰りにぴったり。北の安比高原は規模もバリエーションも上、下倉スキー場はツリーランが最高です。県境を越えた秋田のたざわ湖スキー場では湖の眺めも楽しめます。
総評:遅いリフト、やわらかい雪、熱い湯
網張温泉は、スピードや規模で印象づけようとはしません。標高、静かなゲレンデ、何日も残るやわらかい雪で心をつかみ、滑り終えた先の温泉でとどめを刺します。雪の合間に2〜3泊すれば、地元の人がなぜずっとここを内緒にしてきたのかわかるはずです。
